POWER AND PATIENCE(2011年)
レナード衛藤(太鼓)、鬼怒無月(ギター)、岸利至(プログラミング、キーボード)、SUJI(タップ)
直訳すると「力と忍耐」。メチャ渋いんだけれど、これはシャーマンであり、アフリカ・ガーナのドラマーである故アジャ・アディから受け取ったメッセージ。彼とは、何度もヨーロッパツアーをともにしたけれど、パワー・アンド・ペイシェンスという言葉をいろいろな意味で使っていた。
ある月明かりの晩にアフリカの大地で彼は話してくれた。「太鼓を叩けば、女は踊る。そのうち、女(の意識)は遠くへ行ってしまう(=トランス)。だからって、おまえは一緒に盛り上がってはダメなんだ。女(の意識)が戻ってくるまで叩き続けないとならない。だから、ドラマーにはパワーと忍耐が必要なんだ。」
カッチョ良すぎ(笑)当時、鼓童という太鼓グループで欧米を中心に公演ツアーをしていた私には衝撃的だった。
「ショービジネスに乗っかっている場合じゃない!」
遠いアフリカの大地で啓示を受けた「太鼓と踊り」の濃密な関係。以来、私の創作のテーマになっていったのだ。でも、当時の日本は「ジュリアナ・ト〜キョ〜!」だったからね。その虚脱感たるや・・・(苦)それから20年!ようやく「パワー・アンド・ペイシェンス」をテーマにできる作品ができた。収録曲は、タップやモダンダンスとのコラボレーションで作った曲を再アレンジしたり、ブレンドラムスからの曲をデジタル解釈して再加工したり。
そう、このアルバムのもう一つのテーマはデジタルと作るグルーヴ。ライブでは生音を追求してきたけれど、実はレコーディングでは気付かれないようにいろいろとやっていた(笑)けれど、本格的に向き合うとなるとデジタルは容赦ない。まさに「力と忍耐」のいる作業だった。こちらの感情なんて奴らには関係ないからね。
でも、そのデジタルを作り、操るのは人間。今回、参加してくれた岸さんはその最高峰。布袋寅泰さん繋がりで音作りしていたし、あるテレビ番組の音作りもお願いした経緯があり、私の意向をすぐさま理解して具現化してくれた。
「グフピコ・プニュタク vs. ズドドド・バコ〜〜ン!」
ドライなシーケンサーやシンセベースとフルストロークの大太鼓。やりたかったんだよね(笑)鬼怒さんとは長いお付き合いだけれども、初めての本格的なアルバム作り。アフリカのリンガラ風ギター・リフ。そして、アコギのカッティング。もう最高!今回は、岸さんや鬼怒さんとコラボすることでそのデジタル度が鮮明になったわけだけれど、「電気と私」の関係を繋いでくれたお二人には感謝です。
そして、その音の中に、ここ3年で一番共演しているSUJIとのライブ感ある曲を入れたことで相乗効果が生まれたと思う。
新しい音が生まれる時、周りの非難や無関心といった苦味はつきもの。でも、ちゃんとイメージができていれば、その先に新しい航路が拓かれていくものだと思う。そう、今回は販売方法も香港から世界中に郵送される画期的な最新システムなのだ。念願の海外リリースだぜ!これを機にドンドンと世界に私の『挑戦する音』が響き渡って欲しいものだ。
3.11に志ぶれず・・・。
この作品をリリースするまでの時間は、一生忘れることはないと思う。録音がすべて済んで、ミックス(編集作業)を終えた2日後に東日本が揺れた。正直、ミックスまで済ませておいて本当に良かったと思う。録音中だったら、作品が別物になっていたかもしれない。今も厳しい状況が続く中、音に、パフォーマンスに、創作に対してこれからも真摯に向き合っていれば、絶対にその先が見えてくると思うし、そういう生き方を世に示すべきだと思っている。
つまり、今まで通りってことか(笑)
2011年5月
レナード衛藤